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            東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、ファンタジーの要素を含みながらも、現実の人間関係や人生の選択に深く根ざした物語だった。舞台は、かつて悩み相談を受け付けていた雑貨店。そこに偶然忍び込んだ3人の若者が、過去から届いた手紙に返事を書くことで、時空を超えた人々の人生に関わっていく。
物語は連作短編の形式で進み、それぞれの章が独立しながらも、最後には一本の線でつながる構成が見事だった。特に印象に残ったのは、「再生」という曲にまつわるエピソード。夢を追いながらも報われなかった青年が、命をかけて守った少女によって、その曲が未来へと受け継がれていく。自分の行動が、思いもよらぬ形で誰かの人生に影響を与える――その事実に、深い感動を覚えた。
また、雑貨店の店主・浪矢雄治の存在が、物語全体に温かさと誠実さを与えている。彼の悩み相談への姿勢は、答えを与えるのではなく、相手の心に寄り添うことの大切さを教えてくれる。現代社会では、効率や正解ばかりが求められるが、本書は「迷うこと」「悩むこと」そのものに価値があると気づかせてくれる。
読後、私は「誰かの悩みに耳を傾けること」こそが、奇蹟を生む第一歩なのだと感じた。人とのつながりが希薄になりがちな今だからこそ、この物語が持つメッセージは、より強く心に響く。
 
 










 はおうはじゅん
            はおうはじゅん
          













 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 