瀬戸内の島で育った高校生の暁海(あきみ)と、島に転校してきた櫂(かい)。
2人とも親が精神的に未熟なことが影響し、
心に孤独と欠落を抱えてしまいます。
そんな2人が周囲の様々な人と関りながら生きていく物語です。
両者の親は「こういう女の人いるよね」って印象でした。
親だからという理由で荷物を抱えさせられるのは
いつだって子供なのですが、成人して自分が稼ぐ力を得たら
「切り捨てる」ということを選択してもいいと思います。
人はだれしも
様々な経験することで、いろんな事情を抱えていくものですが、
いつだって自分が選んで決断するということを大切にしたいなと
感じました。
二人の主人公の高校生から三十代までを描く作品。
友情であれ恋心であれ、複雑で恵まれない家庭環境を持つ者同士が、それゆえに近しくなることは、自然なことなのかもしれない。
でもその環境ゆえに、相手を助けてあげられる力はない。頼って迷惑をかけてはいけない、とわきまえてはいてもその健気な気持ちで状況も関係も好転してはくれない。社会の厳しさの中に、主人公たちに手を差し伸べてくれるサブキャラクターがいて、作りこまれたストーリーだけど、まあまあのリアリティーを感じられる。
現実の人生だったら、それでも心の奥底で二人は結びついていたんだ、という結末に迎える強さもなく、日々に流されてなくなってしまう絆なんだろうけれど、それを小説ゆえに綺麗にまとめている。
現実の中ではそこまで一途になれないからこそ、こういう作り物のストーリーを読みたくなるのかも。