私たちが星座を盗んだ理由
優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、ファンタジックな短編集。ミステリの醍醐味、ここにあり!
難病の女の子を喜ばせるため、星座を一つ消して見せる男の子を描く表題作ほか、5つの物語のすべてに驚愕のどんでん返しが待つ傑作短編集!
私たちが星座を盗んだ理由 の書評(感想)
『私たちが星座を盗んだ理由』という素敵なタイトルに惹かれて読んでみた作品です。
内容はミステリーの短編が5編。
その内3編は現代を舞台にしたもので、2編はファンタジー要素のある物語になっています。
最初の物語は『恋煩い』
主人公のアキとトーコ、そしてシュンの3人は小学校の頃からの友人同士。
女子2人男子1人の高校生たちの中で、やっぱり恋の問題が出てきて……
と、ここまでなら切ない青春物語のような雰囲気なのですが、これはミステリー。
最後まで読んだ時の衝撃をぜひ味わってみてほしい物語です。
私が好きなのは『妖精の学校』です。
主人公の少年が目を覚ました場所は妖精の学校。
突然「ヒバリ」と名付けられた彼には、名前を含めたこれまでの記憶がほとんど残っていませんでした。
同じ境遇の子供たちが集まって、ルールを守って暮らしている世界。
絶対に覗いてはいけない「虚」、普段は姿の見えない「魔法使い」、学校のある島を乗っ取ろうとしている「影」……
この世界の秘密を探ろうとした主人公が見たものとはなんだったのか。
そういうことだったのか! という感覚が味わえる上に、考察するのも楽しい物語です。
5編とも少しダークな雰囲気があるので、そういうものを求めている方には特におすすめの1冊だと思います。