王朝物語の居住空間とはどのようなものだったのか。貴族邸宅に存在する殿舎の特徴とは何なのか。
物語の舞台となっている“空間”は登場人物の呼称となったり、そこに住まう登場人物の特性がイメージ付けされたりしている。殿舎は身分・性別・立場などによって相違していたが、実態はどうだったのか。物語の貴族邸宅の全体を俯瞰しようとする書。
虚構である物語の用例のみならず、王朝期に記された古記録や歴史書に記された用例をも検討。建築史学面での平安時代の建築に関する研究も取り入れながら、王朝物語の登場人物と住まいを考える。
物語の文章からは貴族邸宅に存在する殿舎の個別の特徴をうかがうことができる。それらを説明する文章は、登場人物の性質や物語展開と密接に関わってくるものである。それは、物語作者から読者へ向けられた物語読解のためのヒントである――
第一部「女君たちの居住空間」では物語の女主人公の住まいについて考察、第二部はあまり注目されることのなかった「男君たちの居住空間」を考える。第三部「女房たちの居住空間」では、物語を陰で支える女房たちの住まいについて考え、第四部「子どもたちの居住空間」は「寝殿」とその家の子女たちとの関わりや、皇子女たちがどこで生活したかについて『源氏物語』の用例を中心に確認していく。
【平安時代の大貴族の住む邸宅は広大な敷地を持つ。物語はフィクションであるが、そこに登場する上級貴族の邸宅は、やはり実際の貴族の邸宅と同様の仕様・規模を持つものであったと思われる。しかし、そこに住まう物語のヒロインたちは自邸の広さを俯瞰したり、邸宅の隅々まで探索したりすることはできない。彼女たちの視界は狭く限定されたものだっただろう。広い邸宅に比して、ヒロインたちの行動範囲は限られている。その限られた中で女性たちは生き、その中で生活の楽しさを見出していたと思われる。そして、彼女たちの生きるその狭い空間はそのまま彼女たちの呼称となった。居住空間と呼称の深い関係に気付いてから、私は空間についてもっと深く理解したいと思うようになっていった。最初は正殿である寝殿について考察した。そして興味はその寝殿を取り巻く附属舎へと広がっていった。】……あとがきより
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