ポッドキャスト番組、タケトリオキナの「ツキない話」を聴いているリスナーたちの日常を描いた連作短編集です。
登場するのは、人生の転換点に立つ多様な人々。
長年勤めた病院を辞めた看護師の怜花。
宅配バイトで食いつなぐ売れない芸人のポン。
寂しさから娘の結婚を素直に喜べない整備士の高羽。
一刻も早く自立したいと願う高校生の那智。
創作活動に集中したいあまり家族を疎ましく感じる作家の睦子。
それぞれが孤独や葛藤を抱えていますが、同じ番組を聴いているという一点で緩やかにつながり、一歩ずつ前を向いていく姿にとても癒やされました。
そして、気になるのが番組の主であるタケトリオキナの正体。てっきりお父さん的な存在かと思い込んでいたので、明かされた時は「まさか!」と驚きました。
読み終わった後は、まるでお風呂上がりのようなあたたかな余韻に包まれます。劇中の「ツキない話」がとても面白そうで、現実にある番組なら私もぜひ聴いてみたい!と思ってしまいました。
そっと誰かの隣に寄り添ってくれるような、優しさに満ちた一冊です。
















