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商店街にあるお惣菜屋さん「ここ家」を舞台に、三人の女性たちが織りなす連作短編集です。
底抜けに明るいオーナーの江子、開店当初からのスタッフでどこか不機嫌そうな麻津子、そして三ヶ月前に入ったばかりの郁子。名前に「来る・待つ・行く」を宿した彼女たちが、新米配達員の進を巻き込んで繰り広げる「わちゃわちゃ」とした日常が、とても微笑ましく描かれています。
しかし、賑やかな日常の裏側で、彼女たちがそれぞれ抱えている過去や事情は、驚くほど重く切ないものでした。
特筆すべきは、作中に登場する料理の数々。どれも本当に美味しそうで、読んでいるとお腹が空いてきます。その料理にまつわる「思い出」と「現在」を照らし合わせながら、少しずつ過去の傷を乗り越えていく展開が素晴らしく、何度も胸が熱くなりました。
「食べることは生きること」。
どんなに悲しくても、辛くても、丁寧に料理をして美味しく食べる。その力強さが、傷ついた心を癒やす一番の薬になるのだと感じました。「料理が好き」という気持ちは、生きていく上での最強の武器かもしれません。
読後、自分も美味しいものを食べて、明日からまた頑張ろうと思える、優しくて力強い一冊でした。













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