ノンシリーズの主人公巻き込まれ型サスペンスになりますが、正にノンシリーズならではの物語になっていました。
大阪で起こることに関しての物理的な事象については直接描かれますが、全てが明かされるような物語ではなく、特にアムステルダムで起こる出来事については、薬による幻覚のように多くの曖昧さを残したまま終幕を迎えます。
しかし、全てが分かることはそこまで重要なことではなく、起きた出来事に対して何を想い、どのように人に影響を与えるかの方が大切なのだと感じました。
果たして、なぜ水島が殺され運河に流されないといけないのか、恭司の推理した内容が真実なのかどうか、遥介の死が事件と関係あるのかどうか、詩人の死は前夜の騒ぎが直接の引き金なのか。
どれもがハッキリと分かる事実として明かされることはありません。しかし、そこで起きた出来事は、間違いなくその後の人物の行動に影響を与えています。
恭司が啓示のように受け取ったバラバラ殺人の物語は果たして何だったのか。
物語の最後、恭司は現実と空想の境を飛び越えたように見えました。
内面が読みづらい遥介やロンが感じていた思いとは何だったのか。遥介が予知していた未来の景色はどんなものだったのか。
そこに深遠なものがあったのか、薬物により脳がやられていただけだったのか。それは、想像するしかありません。
普段読むタイプの話とは違いますが、面白く読むことが出来ました。