「事件は今日中に解決します―。そして明日には忘れます。」
みなさんは探偵と聞いて、どんな探偵をイメージしますか。
インバネスコートにパイプをくわえたクラシカルな探偵?
現場に赴くことなく事件を解決に導く安楽椅子探偵?
本作の探偵・掟上今日子はそのどれにもあてはまりません。
彼女はたった一日で事件を解決する「最速探偵」であると同時に「忘却探偵」でもあるのです。
彼女の記憶は1日でリセットされます。ですからどんなに楽しい思い出も、手繰りよせた真実も、明日になればすべて忘れてしまうのです。
生まれついての冤罪体質で、行く先々で面倒ごとに巻き込まれる依頼人・隠舘厄介はそんな彼女に淡い恋心を抱いていますが、更新されることのない彼女の記憶に複雑な感情を抱いています。
「今日子さんには、今日しかない。」
厄介のこの言葉に心打たれる人も多いのではないでしょうか。
今日子さんに限らず、みなさんにも、もちろん私にも、今日という日は今日しかないのです。ミステリー小説でありながら、今日という日の尊さにも気づかされます。
個性的なキャラクターと不可解な事件、本格的かつ日常的なトリックで、推理小説初心者のかたでも読みやすい一冊です。
なぜ彼女は記憶を失ってしまったのか。なぜ彼女は探偵という道を選んだのか。
気になるかたはぜひ読んでみてください。