恒川光太郎ファンの私が最初にオススメするのがこれ!!読後、とても不思議な感覚が心地よく残っていてストーリーも深く印象づけられ、恒川氏の世界にハマった最初の本です。
タイトルからして、夜店の楽しい雰囲気を想像しているとその違和感に、なにやら怪しいものを感じます。そして、読み進めると不思議な空間と不思議な時間に徐々に溶け込んでいき、それがまた心地よくなってくる。しかし、その反面恐ろしく、危険な雰囲気も醸し出すため早くここから逃れたいと思うドキドキ感が味わえます。
とにかく、雰囲気のある背景描写がとてもいいです。恒川さんの背景描写は、個人的にとても好きです。
ストーリーもこれまで味わったことのない「ドキドキ」「悲しみ」「切なさ」「優しさ」「懐かしさ」のすべてが詰まっている作品だと思います。日本ホラー小説大賞受賞作品だが、ホラーよりではない、どちらかというとファンタジーも入ってる感じです。
弟を夜市で売るという行為までは、ホラーなんだけど、弟を取り戻すために、主人公が起こす思いがけない行動は、感動する反面やはりある意味ホラーなんだろうか・・。
時空小説も好きな方は、ぜひ読んで欲しい。物語は長くはないけど、一度読んだだけでずっと心の中に残る作品だと思います。
幻想的な夜市を舞台に、現実と夢が交錯する独特の世界観が美しく描かれています。登場人物の繊細な感情や願いが丁寧に表現され、短編ながら深い余韻を残しました。幻想と現実のはざまで揺れる心情が胸に響き、読む人の心に長く残る印象的な作品です。
直木賞候補作にもなった『夜市』と、書き下ろしの『風の古道』という二つの中編を収録した作品です。
レーベルは角川ホラー文庫ですが、いわゆるホラー小説のような恐怖があるわけではないと聞いたので、
ホラー苦手な私でも読めそうだと思い手にしてみました。
『夜市』の舞台は、なんでも売っている不思議な市場「夜市」。
大学生のいずみは、高校の同級生である裕司に誘われて、そこに足を踏み入れることに。
夜市にいる存在も、夜市で売られているものも、普通の世界にいれば目にすることのないものばかり。
その内に二人は道に迷ってしまうのですが、幼い頃にも夜市を訪れたことのある裕司にはある目的があったのです…。
『風の古道』の主人公は男子小学生の私。
7歳の時に不思議な道を通った経験を親友のカズキに話したことから、二人でその「古道」に入ってみることに。
ただ、入ったはいいものの出口がわからない。
そんな時に永久放浪者のレンという青年に出会い、出口まで一緒に向かうことになったのです…。
どちらの作品も異界に足を踏み入れてしまうわけですが、この異界が全くの異世界という感じではなく、
日常の延長線上にふと自然に現れている、不気味ではあってもどこか懐かしい、そういう雰囲気を漂わせているところがいいなと思いました。
また寂しさや切なさを感じる結末ながらも、好きな物語だったなあと思える余韻がありました。
ホラーというより、少し怖いファンタジーという方が説明としてはしっくり来るかもしれません。
恐ろしいからこそ魅力的な異界を、この作品で少し覗いてみませんか?