この物語は、ただの旅ではありません。キノとエルメスが訪れる国々は、どれも“美しい”けれど、同時に“奇妙”で“残酷”でもある。だからこそ、読者はページをめくるたびに「美しさとは何か?」を問い直されるのです。キノが一つの国に滞在するのは、たった3日間。これは、深く関わりすぎず、でも確かに“見る”という旅人の哲学。この距離感が、物語に独特の余韻を与えています。第1巻に収録された「人を殺すことができる国」「撃ちまくれる国」「過去のある国」「優しい国」――どれも一見すると極端で不条理。でもその中に、人間の本質や社会の矛盾が浮かび上がります。特に「優しい国」のラストは、静かで切なく、キノの無言の優しさが胸に残りますキノの相棒であるエルメスは、ただの乗り物ではなく、彼女の“もう一つの声”のような存在。皮肉や軽口を交えながら、読者の視点を代弁してくれる役割も果たしています。タイトルにある「Beautiful World」は、決して理想郷ではありません。むしろ、矛盾や痛みを抱えた世界を“美しい”と呼ぶことで、読者に問いかけてくるのです。それは、創作においても重要な視点――「完璧ではないからこそ、美しい」。この巻は、旅の始まりであり、問いの始まりでもあります。
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発売日: 2000年07月10日
発行元: KADOKAWA
「キノはどうして旅を続けているの?」 「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ……でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ……。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」 ---短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。今までにない新感覚ノベルが登場!
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