珊瑚の兄が残したビルとその1階の古書店。そこで働くことにした親戚の美希喜。古いとはいえ相当な資産になる神保町のビルのことがもっとドロドロ描かれるのか、と思う序盤だったがそうでもなかった。
『古本食堂』の続編的な位置づけであることを知らずに読み、登場人物の背景的なことがはっきりしないまま提示される印象だったのはそのためか、と納得した。
さほど儲かっているとは思えない古書店経営者の兄はどうやってビルを所有するほどの資産を築いたのか、北海道で両親の介護を一手に担った珊瑚が兄を恨むどころか死後も慕っている素地にもなる事情だと思うけれど。中途半端に現実的で、中途半端に綺麗にまとめた感があって、すっきりしなかった。
古書店が舞台なのにタイトルが古本「食堂」なのは、ストーリーの中で登場人物たちが外食したりお弁当を食べたりする場面がアクセントになっているからかも。