無戸籍児として生まれた少年・青(ブルー)の平成元年から終わりまでの半生を、複数の視点人物から語り起こすクライムノベル。
援助交際や貧困ビジネス、不法就労者など、平成のトピックになった社会問題を交えて綴られるが、特にSNSを介した児童ポルノの描写がキツかった。ネット隠語やオプションなど、実際そうやって出回ってるんだろうなと思わせるリアルさがある。
青は殺人者だが、彼がいたこと救われた人間も少なからず存在する。そして彼の人生は悲惨だが、ただ悲惨なだけの物語で終わらせたくない。英語のブルーは憂鬱も表すが、青の人生には確かに美しい瞬間も存在したのだから。
たとえばどこまでも青く透き通る運命の湖の写真、たとえばベランダから見上げた花火。
後にそれが本人を苦しめる罰となっても、彼が愛し、彼を愛する人間との安らぎの時間があったなら、私はそれを否定したくない。彼の物語を「ひどい」の一言で片付けてしまうのは哀しすぎるから。
ブルーは確かに人殺しだが、終盤ある人物へあてた魂の謝罪には涙がこみ上げてきた。
母親でも誰でもなく、あの人物へ真っ先に詫びたことこそ、彼が本来は純粋な人物であり、真から贖罪の気持ちを持っていた事実を示してやるせない。
親と子。斥力と引力。ちゃんと手放すということ。
成人した子供の無心を拒みきれず金を渡し続ける老親もいれば、故郷の子供を想い虐待を見過ごすのを是としなかったベトナム人女性もいる。
親子のかたちは様々だが、子どもを束縛し利用する親の醜悪さや矮小さが描かれる中、ちゃんと手放す勇気を持てたことはもっと評価されていいはずだ。
作中たびたび流行歌の歌詞が挿入されるのだが、白けるか否かは好みによるところ。

















