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【誰からも愛されるという究極のさびしさ】
綿矢さんらしいパワフルさと切なさが同居している表題作も好きだけど、個人的にはもう一つの短編『亜美ちゃんは美人』の予想外の展開に惹きつけられた。美人であるが故に、周りから幻想をもたれ、こうあってほしいと期待され、無条件に愛されてきた亜美の抱える窮屈さと孤独。本文中の「美は常に他者のためにある」という言葉にも考えさせられるものがある。そんな人知れず寂しさを抱える亜美が人生の伴侶として選んだ相手とは…最後まで先が読めない展開にページを捲る手がとまらず一気読みしてしまった。