殺人者である刑事と商社マンがコンビを組んで事件を追う異色バディもの。
面白く読めたのだが、清春と敦子が犯した殺人の掘り下げが浅く消化不良。
敦子はまだ家庭環境など同情の余地はあるし理解できなくはないが、人格形成に多大な影響を及ぼす幼少時に強烈なトラウマを刻まれた清春と倉知さんのエピソードにほぼ描写が割かれないので、いくら幻覚を見ようが「一番大事な人」という言葉が空々しく響く。
二人で三人以上殺してる割には、その5W1Hもサラっと流されてしまうので痒いところに手が届かないモヤモヤ感がすごい。
清春に至っては加害者に協力した人物の妻や恋人まで殺しているのに、他人から指摘されるのみでその事実に対してどう感じているかの描写がまるでなく、「知りたいのはそこなんだよ!」とじれったくなる。
主人公の異常性を際立たせるために、わざと書かない選択肢をとったのかもしれないが……。
それぞれ復讐と怨恨(自衛)に端を発する殺人者だが、清春の爽やかな人柄と敦子のタフな正義感はよかった。
恋愛感情が全く介在しない、獲物にして同胞でもある関係はなかなか痛快。
怜美含めてだれひとり共感も擁護もできないが、主要登場人物の中では娘を心底愛する敦子に一番好感が持てた。
清春と村尾がサイコパスといわれたら否定できないが、少なくとも敦子は違うと断言できる。
怜美の母と姉の事件の真相は常軌を逸しているが、被害者だと思われていた善良な人物が実は……というのは、ありがちだがよかった。
ただし当時小学二年生(7歳)だった怜美が、日常の中で母の行動に全く何にも気付かなかったというのは無理がある。
不審な点はあってもわざと見ないふりをして記憶に蓋をしたのかもしれないが、彼女こそ一番エゴイスティックで面倒くさい人間かもしれない。
終盤の清春の行動は賛否両論分かれそうだが、彼の怜美への態度は終始一貫してたので、とことんブレずに自分を貫き通すスタイルは支持したい。
突然ヒロインに仁義を通す使命感に目覚め、変にヒロイックに走られても白けるし。
総じて面白かったのだが、シリーズ物の一作目の印象が強く、続編がありそうな予感が強い。
清春と縁ができたヤクザや上司など、続編に絡んできそうな予感がする。


















