もしかしたら一回、途中で読むのを挫折してしまうかもしれません。
実は、私がそうでした。
でも、1作目である「月の影 影の海」を読み切った後、最新作まですべて何度も読み込むほど十二国記の世界に魅入られてしまいました。
十二国記の世界観の広大さと緻密さは、何年経っても熱烈なファンがいるほど凄まじいです。
一方で、物語の奥行きの広さと丁寧な描写ゆえに、展開を掴むのに少し時間がかかる作品でもあります。
この1作目「月の影 影の海」の主人公は、平凡で当たり障りのない高校生活を送る陽子という少女。
学校でも家でも日々を無難にやり過ごす陽子は、ひと月近くも続く恐ろしい夢に悩まされていました。
そんなある日、ケイキと名乗る男が現れ陽子を異世界・十二国の世界へと連れ去ります。
なぜ連れてこられたのか? どうすればよいのか?
なにもかも、全くわからない陽子の視点で物語は進んでいきます。
今になって思うとこの視点だからこそ没入感があって面白いのですが、初めて読んだときは陽子と一緒に混乱してばかりでした。
知らない世界で使われる言葉も用語も理解できないまま読み進めるのは大変ですが、だからこそ謎が解けたときの爽快感はひとしおです。
そして陽子に襲いかかる展開は辛く大変なものばかりで、何度立ち上がっても心身を砕かれる様子は読んでいてとても辛いです。
でも、それは陽子に感情移入している証拠。
どうか騙されたと思って、一匹のネズミと出会うところまで読んでみてください。
十二国の世界の住人が、また一人増えますように。