今は洋菓子店で静かに働くみのり。責任の重い仕事は避けたいし、何かに熱くなっている人を見ると、どこか苦手意識を感じてしまう——。そんな彼女の頑なな心の裏側には、20年前の「熱すぎた」自分への痛みがありました。
大学進学を機に香川から上京し、ボランティアサークルで海外支援に没頭した学生時代。使命感に突き動かされ、良かれと思って行動したことが裏目に出てしまう苦い経験。そして、大切な友・フーミンの死や、現実を突きつける翔太の鮮烈な写真……。かつての情熱が大きかった分、ポッキリと心が折れてしまった彼女の喪失感に、胸が締め付けられました。
物語は、甥の陸との交流を通じて、祖父・清美の秘められた過去や、謎の手紙の送り主である涼花の存在へと繋がっていきます。過去と現在が交錯するなかで、みのりの凍りついていた時間がゆっくりと動き出す様子が、丁寧に描かれています。
特に心に響いたのは、ラストの寿士との会話です。「もしまた挫折したら、残念会をしよう」——。
成功することだけが正解ではなく、転んだときには笑って迎えてくれる場所がある。その約束が、みのりにとって、そして読者にとっても、どれほど大きな救いになることでしょうか。
一度立ち止まったことがあるすべての人に寄り添ってくれる、夜明けの光のような優しい物語でした。
















