シンプルで可愛い絵に反して、とても深く重い内容のエッセイです。
常に酔っているアルコール依存症の父と、そんな父に奴隷のように働かされ宗教に救いを求めていた母を持つ作者の実体験。
外側から見れば壮絶としか言いようがない家庭環境でも、当事者である子どもにとっては日常です。
DVや育児放棄の恐ろしいところだと思っていましたが、こちらの作品は周囲の大人にもなんだか腹が立ちました。
時代なのかもしれませんが、誰もこの親の異常に気づき助けようとは思わなかったのだろうかと思うと、深い闇を感じてゾッとします。
しかも自己肯定感も低いため、DV男と付き合う、自分を褒めてくれたり好意を寄せられることを認めることができません。
辛い環境で育つと、我慢することが当たり前になり、自分自身の存在さえもしんどく感じてしまうところに共感しました。
たとえ大人になっても、とにかく生きづらく苦しい、という点がとても明確に描かれています。
成長するにつれて世界が広がり、「普通」の家族の姿にきちんと目を向けた時の作者の苦悩が本当に切ないです。
宙ぶらりんで終わるのではなく、最後に少しだけ希望と優しさを感じることができる締め方に、作者の思いこめられているような気がしました。
映画化も決定した、毒親関連のエッセイの中ではおすすめの作品です。