ミステリー小説である
最初読了してそのトリックに驚愕した作品の1つ
普通に読み進めていっても全く違和感なく読んでいたのにまさかそこからトリックだったのかよと思わされた
たしかに実写化が難しいと言われているトリックだけど面白かった
『葉桜の季節に君を想うということ』は、歌野晶午による叙述トリックの傑作であり、読後にすべての風景が一変する衝撃を味わえる小説です。主人公の一人称で語られる優しい物語が、終盤で驚きの真実へと収束していく構成は見事の一言。恋愛小説のような柔らかさの裏に潜む巧妙な伏線とミステリー要素が絶妙に融合しており、心に残る感動と驚きが同時に押し寄せます。読む前と後で印象が全く変わる、唯一無二の作品です。
最後の「補遺」を先に読んでしまったのは、本当に悔やまれます。読んでいる途中で「ああ、きっとこうなんだろうな」という予感が、見事に的中してしまいました。素直に騙されたかった……そんな思いでいっぱいですが、それでも面白かったのはさすがです。
勘違いさせるような描き方は随所にありましたが、よく読むと「もしかして?」と思わせるようなヒントが散りばめられていることに気づきます。
そして、読み終えても残る「蓬莱倶楽部はどうなったんだ?」という疑問。全てが明らかになるわけではないところが、この作品の奥深さかもしれません。
何よりも、トラさんの尋常ではないバイタリティには脱帽です。「どうして俺が特別であってはいけないんだ。誰が決めた。特別か特別でないかは生きてみないとわからないじゃないか。」という彼の言葉には、胸を打たれました。腹筋が割れている時点で、すでに十分特別だと思いますが。
騙されたかった気持ちと、わかっていても面白いという気持ちが入り混じった、不思議な読後感の作品でした。
「やられた!」読後の第一印象がそれだった。注意深く読んでいたつもりだが、確かにところどころにかすかな違和感は感じていた。それでもこの展開は予想外。ただの素人探偵の冒険譚かと思いきや、最後の最後でどんでん返し。
だまされる快感を味わいたい方へおすすめします。