巷では問題作ともいわれる『ミステリーの帝王』東野圭吾が描く少しファンタジー要素が強い物語ということでドキドキしながら読み進めていきました。
主人公は妻子持ちのどこにでもいそうなごく普通の男性・平介。
彼の感情に比喩表現が多く仕掛けられ、
物語の始まりから平介の気持ちに寄り添いやすいよう構成されています。
また、文章が比較的短いので頭に入ってきやすく
次の展開が気になるよう創り上げられていました。
平介が何気なくいつもの日常を送っていたと思ったら
突如妻子が乗っているバスが事故に巻き込まれます。
彼が妻を失い娘の意識が戻る中、
私は『実はこの事故は仕組まれていたんだ!これは物語の序章に過ぎない。』と
一人勝手に推理を進めていたのですが、なんだか娘の様子がおかしく
平介が質問をしていくうちに妻の心が娘に憑依してしまったことがわかります。
毎度おなじみのように事件が勃発して推理が始まっていくと思っていたので、
いつもとはどうやら違う様子にこれから何が起こっていくんだろうと序盤から心躍ります。
事態に混乱し困惑する平介と妻ですが、
彼女は自分の存在を隠し娘として生きていくことを決心します。
そして、自分の記憶を頼りに娘と関わりの合った人たちと接していきます。
娘の姿ではあっても、実際は30年ほどの人生を歩んできているので
年の功なのか娘として振る舞っていてもすぐにぼろが出てしまいます。
確かに年を重ねると経験や知識が増えていくがゆえに、大人の了見が邪魔をして
子供のころの無邪気さや繊細さは失われていくんだとしみじみとした気持ちになりました。
そして、妻の娘としての学校生活が始まるのですが何やらひと騒動ありそうな予感です。ここから先も見どころ満載ですが、
これ以上話してしまうと面白みがなくなってしまうので
続きが気になる方は是非一度本を手に取ってお楽しみください。