余命短い女子高生、山内桜良と、一人で読書に没頭する志賀春樹、2人はクラスメートだったが、接点がなかった。
ところが、彼女の病気の事を彼が偶然知ったのがきっかけで2人は恋愛とも友情とも違う関係で結ばれる。
端から見れば2人は付き合ってるように見えるから、志賀は彼女を好きな男子から嫉妬されたりする。でも秘密を知っても普通に接してくれる心地よさを初めて感じたのが、彼だったのだ。
文章がリズミカルで読みやすかった。
住野よるデビュー作品です。明るくクラスで人気者のヒロインの隠された秘密を知ることから、主人公とヒロインが仲良くなっていきます。余命を楽しむヒロインの健気さに思わず号泣してしまう、甘く切ない恋物語です。
はじめてこの本を知った時、満開の美しい桜の絵と「君の膵臓をたべたい」という題名にギャップを感じ、どんな話なのか全く想像がつきませんでした。
そして読んでみると…
え!? 止まらない!! 面白い!
会話のシーンだけでなく全体としてとてもテンポが良く、1度読み出すと止まらずあっという間に読み切ってしまいました。
普段あまり本を読まない方でもとても読みやすいと思います。
桜良が主人公をどう思っているか、名前ではない表され方で変化していき、二人の関係性の変化も表現されているようで面白かったです。
自分の病気の事を家族以外で唯一知っている主人公に対して、桜良は何度も「私は死ぬから」と言葉にしていました。
「死ぬ」という言葉の持つ意味は恐ろしく重いはずなのに、彼女は笑顔で軽く口にしてしまう。
そんな様子を見たら本当に死ぬのだろうかと思うのも当然です。
自分が病気でもうすぐ死んでしまうと分かっていても、卑屈になるのではなく、やりたいことを目一杯やりきろうという思いは彼女の強さを表していると思いました。
そしてこの本を読んで感じたのは、人間はいつどんなかたちで死ぬのか分からない。
だから、1日の価値は病気の人でも健康に生きている私でも変わらないということです。
自分の持っている全財産を1日で使い切る方なんていないと思います。
ダイエットも、貯金も、仕事も、勉強も、未来の自分への投資だと思います。
しかし、今の自分が投資している未来が、確実にやって来るか分からないのだと気付かされます。
綺麗事のようですが、今の環境を大切にして1日1日を後悔しないように生きようと思う作品です。
最後まで読み終えると、満開の美しい桜も「君の膵臓をたべたい」という題名も、この本にぴったりだと思います。
私も、この人の膵臓を食べたいと思うような人に出会いたいと思いました。