物語の舞台は、雪深い山中にそびえるガラス張りの塔「硝子館」。そこに集められたのは、医師、作家、霊能力者、刑事など、個性豊かな登場人物たち。彼らは大富豪・神津島の重大発表を聞くために招かれたが、やがて彼が毒殺され、館は“クローズド・サークル”の殺人劇へと変貌する。
読んでいて、私は「読者への挑戦状」が提示された瞬間に心が躍った。これは単なる物語ではなく、読者と作者の“知的な勝負”なのだ。伏線の張り方、人物の配置、視点の操作など、すべてが緻密に計算されており、推理する楽しさが詰まっていた。
特に印象的だったのは、主人公・一条遊馬の内面描写だ。彼は妹の難病治療をめぐって神津島に複雑な感情を抱いており、その葛藤が物語に深みを与えている。また、自称名探偵・碧月夜とのやり取りは、ユーモアと緊張感が絶妙に混ざり合い、読者を飽きさせない。
この作品は、ミステリーの形式美を守りながらも、「人間の欲望」「倫理」「科学と正義」といったテーマを内包している。犯人の動機に触れたとき、私は「正義とは誰のものか」「人を裁くとはどういうことか」と考えさせられた。
『硝子の塔の殺人』は、ミステリーの醍醐味を凝縮した一冊であり、読者の推理力と感性を刺激する“知的な迷宮”でもある。読後、私は「物語を読むとは、作者と対話することなのだ」と感じた。そして、私自身もまた、日常の中で“真実を見抜く目”を養っていきたいと思った。
緻密に張り巡らされたトリックと、登場人物たちの複雑な思惑に最後まで翻弄された。何が真実で、誰が嘘をついているのか——読み進めるほどに疑念が深まり、ページをめくる手が止まらない。密室の中で展開する心理戦と、意外すぎる結末には思わず息を呑んだ。推理小説好きなら間違いなく満足できる一冊だった。
主人公で医者である遊馬は妹ののALS治療のため、その特許を邪魔する主人を毒殺する。目的は果たしたに見えたが、その後、硝子の館で次々起きる殺人事件。果たして何が起きているのか。そして、主人公と同じくガラスの館に呼ばれた名探偵の推理が冴え渡る!

















