久しぶりに声出して笑ったギャグ漫画。
吸血鬼ハンターと吸血鬼のドタバタ同居がメインで、一巻はまだ序章で大人しめだが、巻が進むごとどんどんかっ飛んだ変態が増え、新横浜のローカル色がでてくる。とにかくボケとツッコミのセンスが素晴らしく抱腹絶倒、ソウルフルなリリックに爆笑必至。
「新幹線が止まる虚無」とかどうやったらこんな斬新な返し思い付くんだ!?
下ネタが多いので好き嫌い分かれるかもしれないが、排泄系ではなく小学校低学年レベル(「ち〇ちん」連呼)のえろさ故に抵抗なく読めた。
……というかY談おじさんやゼンラニウム、吸血鬼マイクロビキニ、スケベな妄想でグロい姿に変身するへんなどうぶつが続々登場する時点でお察し。
フツウにしてればかっこいいのに口を開けると残念なイケメン・ロナルドとすぐ死ぬドラルクのコンビも楽しいし、アルマジロのジョンは問答無用の癒し系。ただ無害で愛くるしいだけじゃなく、コマの端っこのリアクションが逐一面白い。ヌーヌーにも癒される。
基本一話完結でさまざまな(変態)吸血鬼が出てくるのだが、虫や動物はおろか野菜や家電までも吸血鬼化する世界観なので、加速度的にカオス化していく……
が、一話こっきりの使い捨てキャラ皆無。
出オチキャラやモブが準レギュラーに昇格するのは言うまでもなく、こんなの絡ませられるの!?と心配になるようなヤバい個性の持ち主が、思いがけぬ接点で既出キャラと出会い、主人公が干渉するしないにかかわらず性癖や価値観が変化し、人間関係が広がっていくのがめちゃくちゃ面白い。
サブキャラ同士の化学反応で互いに刺激を受け、やがてそれがロナルドたちへも波及していく理想的な循環構造。
結構な本数主人公コンビが出てこず、準レギュラーの吸血鬼や吸対課がメインを張る回があるが、どれも読みごたえたっぷり。ナギリに至っては裏主人公の風格。
ギャグ漫画なのでさもありなんだが、死人がでないので安心して読める。
吸血鬼を一方的に退治するばかりじゃなく、人間と吸血鬼が共存したり、別の吸血鬼の協力を得て平和な方面に収拾が付く話も多く読後感がいい。
作中にでてくる吸血鬼は8:2の割合でほぼ手遅れな変態なのだが、やってることがものっそい馬鹿なのでどうにも憎めないし、しばらく見ないと妙に寂しく「また出てこないかなあ」と思ってしまう危険な罠。
ロナルドが吸血鬼退治にいく、ドラルクがトラブルを起こしてロナルドを巻き込む(またはその逆)、愉快な仲間たちの奇行のとばっちりを受ける。
導入は大まかにこの3種のテンプレなのだが、毎回きっちり笑わせる手腕は見事。コミックス二桁台になってもパワフルなボケとツッコミの切れ味は鈍ることなく、マンネリ化の宿命を免れている。ギャグ漫画のお約束、勘違いの玉突事故で大参事に至るテンポも最高。
人や動物の微妙すぎる表情の描写も最高で、ヌヌー!?とショックを受けるジョンや、おばあさんが教会の壁に描いたキリストのような虚無にのまれて目が死ぬボサツには吹き出す。
ロナルドは自伝的な小説を書いてる兼業作家なので、締め切りに追われたりスランプに陥ったりと、作家あるあるイベントで悶々とするさまは物書きの経験があるならツボるはず。
……ここまで出版社をネタにしまくり、いじり倒せる度胸はすごいな……信頼関係のあらわれだろうか。
新キャラを出しまくった結果、風呂敷が畳めず自爆するケースも多いが、この作品は「だれだっけ?」って無難な個性が一人もおらず、尖ったヤツと尖ったヤツの相乗がさらに面白くする。
話は型破りだが、吸血鬼の設定自体は意外すぎるほどしっかり練られてるのも好感触。クスッと笑えるどうでもいい小ネタ知識ものっていて、すみずみまでサービス精神が行き届いてる。
気持ちよく笑える漫画をお探しならぜひおすすめしたい。

















