足利義政の人物像がこれまで持っていたイメージよりもはるかに奥深いものだと感じました。一般的には「無能な将軍」や「銀閣の文化人」といった印象が強いですが、この本を読むと、義政が政治的にも文化的にも非常に興味深い存在であることがよくわかります。
特に、彼の時代の混乱と、将軍としての葛藤が丁寧に描かれていて、単なる怠惰な君主ではなく、状況の中でもがきながらも文化を築いた人物だったことに驚きました。応仁の乱の混乱の中で、美意識を極めた銀閣文化を生み出したのは、まさに彼の個性と時代の融合の結果なのかもしれません。戦国時代の幕開けを招いた人物としてではなく、一人の人間としての義政を知ることができる、とても読みごたえのある一冊でした。