『心理支援における社会正義アプローチ ― 不公正の維持装置とならないために』は、心理職が関わる支援の現場に潜む「構造的な不公正」に光を当て、その是正に向けた実践的視点を提示する重要な専門書です。和田香織・杉原保史らによる本書は、心理支援が個人の問題解決にとどまらず、社会的背景や権力関係をどう捉えるかを問い直します。事例と理論の両面から、支援者自身が無意識に不公正を再生産しないための批判的思考を促す構成。臨床・教育・福祉に関わる人に強く薦めたい一冊です。
個人の問題を自己責任とする傾向・論調への反省から、今最も注目を集める社会正義(ソーシャル・ジャスティス)。これは、その人の抱える困難を文化的・社会的・経済的な文脈で捉え、社会の側に変化を求める考え方である。欧米では盛んなものの、人種差別や性差別に関わるものが多い。そこで本書は、日本風土にマッチした心理支援の実践モデルを紹介することで、学派や理論的背景を超えたこれからの心理臨床のあり方を探り、新たなアプローチを提言する。
はじめに [杉原保史]
第1部 イントロダクション
第1章 社会正義カウンセリング概説:その歴史と特徴 [和田香織]
第2章 社会正義アプローチにおけるコンピテンシー [蔵岡智子]
第2部 多様な学派からのアプローチ
第3章 心理支援におけるフェミニスト・アプローチ [村本邦子]
第4章 コミュニティ心理学と社会正義 [榊原佐和子]
第5章 ナラティヴ・アプローチと社会正義:「当たり前」に抗う,その可能性を求めて [廣瀬雄一]
第6章 心理力動的心理療法における社会正義アプローチ [杉原保史]
第7章 パーソンセンタード・アプローチと社会正義 [井出智博]
第8章 認知行動療法における社会正義アプローチ [小堀彩子]
COLUMN1 里親子支援がもたらした「社会正義とアドボカシー」との出会い [上野永子]
COLUMN2 親子交流支援という社会正義 [草野智洋]
COLUMN3 沖縄戦を生きぬいた人々との実践活動:なぜ「平和」を発信し続けるのか [吉川麻衣子]
COLUMN4 「学びの多様化」の促進:不登校という社会課題の解決に向けてーータウンスクーリングという試み [横地香代子]
COLUMN5 社会正義の観点から考えるDV加害者プログラムとは [佐藤紀代子]
COLUMN6 ハラスメント相談における社会正義 [葛 文綺]
第3部 トピックス
第9章 新自由主義と現代人の心 [杉原保史]
第10章 新植民地主義と心理臨床における文化盗用:マインドフルネスを例に [和田香織]
第11章 スティグマ [井出智博]
第12章 マイクロアグレッション [葛西真記子]
第13章 インターセクショナリティ [和田香織]
COLUMN7 大学生の支援にもっと社会正義の視点を! [中澤未美子]
COLUMN8 あらゆるジェンダー・セクシュアリティおよびLGBTQ+コミュニティへの支援 [大賀一樹]
COLUMN9 学校臨床における社会正義 [蔵岡智子]
COLUMN10 留学生相談と国際政治の視点 [山内浩美]
COLUMN11 インターセクショナリティについての授業例 [和田香織]
第4部 トレーニング
第14章 カナダの大学院プログラムから:カルガリー大学カウンセリング心理学科を例に [和田香織]
第15章 公認心理師・臨床心理士養成課程における授業実践 [井出智博・蔵岡智子]
おわりに [和田香織]
人名索引
事項索引
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