ありがとう
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【父は最後まで愛人の名前を口にしなかった。もしかしたら、その具体性がなによりも私たちを決定的に傷つけることを、父は知っていたのかもしれない】同じ物語を男女それぞれの視点で描かれた作品が好みなので、「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」が特に印象的だった。パートナーにふとした瞬間違和感を覚えたり、“きちんと”正しく愛されているはずなのに空虚感を抱いたことがある人はきっと共感できるものがあるはず。私自身状況は違えど、心の奥底に蓋をしてしまっていたはずの気持ちが蘇ってくる感覚があった。瞳の行為は道徳的にはアウトだけど、完全に否定することができない自分がいる。