【父は最後まで愛人の名前を口にしなかった。もしかしたら、その具体性がなによりも私たちを決定的に傷つけることを、父は知っていたのかもしれない】同じ物語を男女それぞれの視点で描かれた作品が好みなので、「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」が特に印象的だった。パートナーにふとした瞬間違和感を覚えたり、“きちんと”正しく愛されているはずなのに空虚感を抱いたことがある人はきっと共感できるものがあるはず。私自身状況は違えど、心の奥底に蓋をしてしまっていたはずの気持ちが蘇ってくる感覚があった。瞳の行為は道徳的にはアウトだけど、完全に否定することができない自分がいる。
直木賞受賞第一作!
すれ違う大人の恋愛を繊細に描く、全六篇の作品集。
「あなたは知らない」……私を「きちんと」愛してくれる婚約者が帰ってくる前に、浅野さんと無理やり身体を離して自宅までタクシーでとばす夜明け。ただひたすらに「この人」が欲しいなんて、これまでの人生で経験したことがない。
「俺だけが知らない」……月に一、二回会う関係の瞳さんは、家に男の人がいる。絶対に俺を傷つけない、優しく笑うだけの彼女を前にすると、女の人はどれくらい浮気相手に優しいものなのか、思考がとまる。
同じ部屋で同じ時を過ごしていながら、絶望的なまでに違う二人の心をそれぞれの視点から描いた1対の作品。他の収録作品に「足跡」「蛇猫奇譚」「氷の夜に」「あなたの愛人の名前は」など。
【著者略歴】
島本理生(しまもと・りお)
1983年生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。2018年『ファーストラヴ』で第159回直木三十五賞受賞。『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『よだかの片想い』『イノセント』『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』など著書多数。
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