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短大の入学金を母親に使い込まれた理佐は、母の婚約者からひどい扱いを受けている8歳の妹の律を連れ、二人で独立することを決意します。
そば屋を営む浪子さんと守さん、絵描きの杉子さん、律の担任である藤沢先生、友人である寛実と父親の榊原さん、町内会の園山さんなど、たくさんの人々に助けられ、見守られながら、姉妹は懸命に生きていきます。
ヨウムのネネもいつもそばにいて、家族のように見守ってくれています。姉妹が置かれた状況は決して楽なものではないのに、物語は淡々と描かれていて、とても読みやすかったです。
カバーの温かい絵にも癒されますが、何よりも、登場人物たちのさりげない優しさや思いやりが心に染み渡りました。
「自分はおそらく姉やあの人たちや、これまでに出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている」という一文は、この物語の温かさを象徴しているように感じます。たくさんの人の優しさで形作られていく姉妹の人生に、胸が熱くなりました。