今までにないダークな部分を見せたい!という原田マハの意欲作。ノワール小説で短編集。ノワールはフランス語で黒の意味。帯には、禁じられた遊び、爛れたエロス、閃く殺意の文字が書かれている。まさに黒い側ということなのだろうか!?
”禁断の書”と銘打たれた原田マハの短編集。
「深海魚」
高校生のいじめや性愛、そして殺意まで描いている。
ーー暗闇の中、奥深く、生き抜けるのだろうか?
「楽園の破片」
かつての不倫相手との講演会に向かう美術の専門家の女性の性と愛の葛藤を描く。
ーータイトルが良い!
「指 touch」
私大の日本美術史博士課程2年生の女性の思惑に震える。
ーー女性目線の愛欲にゾクッとさせられる!
「キアーラ」
イタリアの文化遺産修復の現場を舞台に、過去と現在が幻想的に交錯する。
ーー女性の欲望はアートを超えるの?
「オフィーリア」
芥川龍之介『地獄変』へのオマージュである。
ーー原田マハ風『地獄変』は良いね!
芥川も読んでみたくなった。
「向日葵奇譚」
1枚の写真から、ゴッホの人生が現在に入り込み、人を幻惑する。
ーー究極のゴッホ愛︎ !?
読む前は、もっとドロドロとしたゲスな嫌なモノを見せられるのかと思っていた。読み終えてみると、愛欲、性欲、不倫、いじめ、殺意など、いつもの原田マハにはない世界が描かれていて違う作家なのかとも思ってしまうが、短編集ということもあり想像以上に黒い感じはしなかった。黒いというより、アナザーサイドの原田マハと言う方が良いかもしれない。今度はぜひ長編でのダークな世界を読んでみたいと思う。
原田マハは、インタビュー記事で「作家として、絶対に一度はダークな部分を書かなければ、コンプリートしないと思っていました。」と語っている。
原田マハの作家としての矜持、姿勢、生き方を好きにならずにいられない。これからもずっと原田マハの作品は読み続けたい。