悪徳と陰謀渦巻く五十年代のLAを舞台に、それぞれ立場も性格も異なる三人の警官と三つの事件を軸に時代のうねりを描く大作。
まず三人の警官の対比がいい。
上昇志向が強く潔癖なエリート警官エクスリーと少年期のトラウマから女への暴力を憎むバド、誤って市民を射殺した過去をもつゴミ缶ジャック。血のクリスマス事件で出世の明暗を分け反目しあう三人がそれぞれの譲れないものを胸に共闘に至る過程に引き込まれる。
特にエクスリーの人間的弱さに惹かれる。
父親へのコンプレックスを払拭しきれず、「完全なる正義」の有り方について苦悩し続けた彼の終盤の選択に胸が熱くなる。
互いに憎み合っていたバドとの間に芽生える同志としての連帯感、二人が接近するきっかけとなる「突き飛ばしてくれてありがとうよ」の台詞が後の伏線になる構成も心憎い。
P362、自分が育った家を見て回るエドの胸中に去来する追想と父への別れの台詞には喝采を送りたい。
エピローグの美しさ切なさは絶品。
なにもかもを犠牲にして なんの意味もない栄光。
最後のページを閉じた時、上巻冒頭に掲げられたエピグラフの意味が真に理解でき、言葉にならない想いが押し寄せる。

















