流浪の月 を読んで、ものすごく胸が締め付けられました。社会の「常識」では語れない、家内更紗と佐伯文という二人の、“当事者にしかわからない関係”の描写が切実で、正解のない感情や痛みをリアルに感じさせられました。 
「罪」「偏見」「再出発」「理解と誤解」の間で揺れる二人の姿を通して、世間の価値観で人を決めつける怖さや、「真実はひとつじゃない」というメッセージに深く考えさせられ、読後はしばらく心が揺れ動いていました。 
重く苦しいテーマを扱ってはいますが、そのぶん“人間の複雑さ”や“傷ついた心の再生”について、強く響く一冊だと思います。
物語の主人公、更紗と文は、世間から「誘拐犯」と「被害者」というレッテルを貼られた関係だ。しかし、彼らの間にあったのは、そんな単純な言葉では表せない、深く静かな絆だった。二人が共有した時間は、孤独な魂が寄り添い合う、かけがえのないものだったのだと思う。
読んでいて、私は何度も胸が締め付けられた。世間の「善意」が、当事者の真実を踏みにじる場面。誰かの正義が、誰かの痛みを生むこと。それは、現実の社会でも起こりうることだと感じた。私たちは、表面的な情報だけで人を判断してしまうことがある。でも、本当に大切なのは、その人の声に耳を傾けることではないだろうか。
更紗が文と再会し、再び「一緒にいたい」と願う場面は、切なくも美しい。その願いは、周囲の理解を得られないかもしれない。それでも、自分の心に正直であろうとする姿に、私は強さを感じた。愛とは、誰かの期待に応えることではなく、自分の心が望む場所に向かうことなのかもしれない。
『流浪の月』は、私に「人を理解するとはどういうことか」を教えてくれた。偏見や常識にとらわれず、目の前の人の痛みや願いに寄り添うこと。それが、私たちにできる最も優しい行為なのだと思う。
この作品を読んで、私はもっと人の話を聞ける人間になりたいと思った。誰かの「月」が流浪しないように、そっと寄り添えるような存在になりたい。
凪良ゆうの『流浪の月』は、過去の事件によって社会から孤立した少女・更紗と、彼女を静かに支える青年・文の関係を描いた感動作です。傷ついた二人が互いを理解し、少しずつ心を開いていく過程が丁寧に描かれ、切なさと温かさが同時に胸に迫ります。社会の偏見や罪の重さを背景にしながらも、希望や人を思いやる優しさが物語全体に漂い、読み終えた後も余韻が長く残る、心に深く響く小説です。
心の傷と再生を静かに描いた物語で、とても胸に響きました。過去のつらい出来事を背負いながらも、それぞれの人生を懸命に歩む登場人物たちの姿が優しく描かれていて、読んでいると自然と応援したくなります。時間をかけてゆっくりと関係が紡がれていく様子や、心の距離が少しずつ縮まる感じが丁寧で、読み終えた後に深い余韻が残りました。悲しみの中にも希望が見える、温かい物語です。
愛ではない。けれどそばにいたい。
少女誘拐事件の犯人とその被害者。
犯人は大学生19歳、被害者は小学生9歳。
でも、これは外側から見た説明に過ぎなかった。
本人たちにしてみればまったく違った関係性だった。
大学生は、少女しか愛せられない。
少女は、家庭にも学校にも居場所がない。
そんな2人が出逢ってしまい、惹かれ合う。
でも、事件のために引き裂かれてしまう。
15年後再会する。
2人はお互いの必要性を感じることになる。
でも、それは愛情ではない。
そんな2人を考えると何とも言えない気持ちになる。
多様性は口に言うのは簡単だが、理解して実行するのは難しい。
当事者の常識は世間の非常識。世間の常識は自分達の非常識。
小説の中では、多様性以外にも、厳格な教育、DV、性被害、シングルマザーなどを絡めて鋭く描いている。
凪良ゆうという作家の力量に驚かされた。













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