国境近くの離島で暮らす、元海女の92歳のイオさんと88歳のソメ子さんの物語です。イオさんの娘であるウミ子が、母を引き取りに島へ戻ってくるものの、イオさんに拒否されてしまいます。
空と海の青さが眩しく、透き通ったような世界観に引き込まれました。
たった二人のために定期船は年間二千万円もの費用がかかる。しかし、もし無人島になってしまえば密入国者が住み着く恐れがあり、それも困るという、この島の抱える現実が重く響きます。
そんな状況下で、二人の老婦人が協力し合いながら生活し、崖の上で鳥と踊る姿が、あまりに尊く、胸を打ちます。残された時間が長くないからこそ、その光景は一層美しく、愛おしく感じられました。
いつか二人が本当に鳥になる日まで、どうかこのまま、誰にも邪魔されずに好きに暮らしていてほしいと心から願わずにはいられません。島の記憶と誇りを守る二人の姿に感動する一冊でした。