川村裕子さんの『王朝の恋の手紙たち』を拝読し、平安時代の貴族たちの繊細な感情のやり取りに深く心を惹かれました。
現代の私たちには想像もつかないほど、言葉の一つ一つに情感が込められ、贈られた歌や文面から、恋の始まりのときめき、焦がれるような想い、そして時には身を焦がすような苦しみまでもが鮮やかに伝わってきました。
特に印象的だったのは、直接会うことが許されない時代において、手紙が二人の間を繋ぐ唯一の手段であったということです。
だからこそ、文字に託された想いは深く、何度も読み返され、大切にされたのでしょう。
現代のSNSでの気軽なコミュニケーションとは異なり、相手を想い、言葉を選び、時間をかけて届けられた手紙には、重みと真実味がありました。
この本を読むことで、遠い昔の王朝の人々の恋愛模様を知るだけでなく、言葉が持つ力、そして相手を想う心の普遍性を改めて感じることができました。