ありがとう
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数々の伏線を回収する鮮やかさは相変わらず。どうでもいい会話や出来事は一つもない。
軽やかにすら聞こえる語りで紡がれるのは弱者が理不尽に虐げられる世界。作者はこの世から悪意や罪や理不尽がなくならないこと、勧善懲悪が通用しないことを知っている。
小説的能力があっても都合のよすぎる大団円はない。それでもユーガとフーガはただできることをするのだ。そこに作者のどうにもならないことへの姿勢を感じる。
最後は風我の中に優我はいると思わせる描き方で微かな救いを与えてくれる。
やりきれなさの中に清々しさも。そんな風に読みました。