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恋とは甘くほろ苦い。まるでココアのよう。
昭和53年に刊行された作品ということもあり、今の時代とは異なる価値観や風景が新鮮で、とても興味深く読み進められました。
特に心に残っているのは、「春つげ鳥」のラストです。予期せぬ結末に驚き、読後もしばらくその余韻に浸っていました。また、「雨の降ってた残業の夜」の最後の一文には、思わず痺れました。
登場人物たちは、過ぎ去った恋に対して決して未練がましくありません。冷静に過去を受け止め、その思い出を宝物のように心に秘めている姿が、とても格好良く映りました。
「孤独な夜のココア」というタイトル通り、淋しさや切なさを感じる物語が多い中で、「エイプリルフール」と「中央区・押小路上ル」は、心が温かくなるような優しい読後感を与えてくれました。
昭和の雰囲気を味わいながら、様々な「恋」の形に触れることができる一冊です。