アニメ化もした「BEASTERS」と同世界観の短編を収録した一冊。
それぞれ別の組み合わせ同士の動物たちの恋愛や友情、葛藤や欲望、あるいはそのどれでもない、言葉にしにくい微妙な関係性に焦点を当てており読み応えたっぷり。
「BEASTERS」同様、こちらでも肉食と草食の対立が土台にある。
捕食者と非捕食者・加害者と被害者という変えられない現実を踏まえながら、不器用なコミュニケーションを通し、自分と価値観や体質の異なる他者と関係性を育んでいく登場人物たち。
最後のカメレオンとキツネの学生の話に象徴的だが、同調圧力が個性を殺す現実へのフィードバックも多く考えさせられる。
いちばん好きなのは草食VS肉食のクッキング番組の話。
視聴率低迷中の長寿クッキング番組に、テコ入れとしてワニの料理講師が参入するのだが、ガゼルの助手は本能的に彼が受け付けられない。ワニはワニで悪趣味すれすれの際どいジョークを飛ばしまくり、スタジオはピリピリムード。
そんな中で今日の料理を作っていくのだが、互いへの対抗心や警戒がイイ感じの緊張感を生み出し、回り回ってポジティブな結果をもたらす展開が面白い。収録作の中では最もコメディ色が強く、肩の力を抜いて楽しく読める。レゴたちもチラッと出演してる。
「BEASTERS」の世界をより深く理解する為のテキストとしても入門編としても最適の一冊なのだが、難を言えばちょっと矛盾を感じる。
現在「BEASTERS」では肉食と草食の混血問題が主軸になっているが、前提として異種婚は合法、異種の性行為も可能な世界観だとすると、いい年したラクダの記者とオオカミの美女がホテルの一室に泊まり、ただ指を齧るだけですますのは不自然だ。
のちの描写からそれ以上の行為には及んでないと判断したが、前段として一日デートもしており、食欲だけ抜き出して描くのはキレイ事で終わらせようとしてる感があってひっかかる。あそこは性欲と結び付けて描く方が納得いく。
時系列では「BEASTERS」連載前の作品なので、当時と今とで作者の考えに変化が起きたのかもしれないが……。

















