犬大活躍。
最強の霊能力者・比嘉琴子が活躍するシリーズ。今回は砂が積もる不思議な家が舞台。序盤の霊現象自体は地味だけど面白く読めました。家の隅々に降り積もる砂の視覚的イメージと知らぬ間に日常を浸蝕していく狂気の相性が良くて、ひたひたと忍び寄る不気味さがある。
ありがちだけど、客観的にはどう見ても異常なのに住人たちは普通だと思い込んでいる落差が薄ら寒い。
琴子の子供時代のエピソードも語られるが、個人的には彼女の価値観を方向付ける事件も説得力があると思った。
大人がチワワに吠えられても動じないが、幼稚園児がチワワに吠えられたら恐怖するのと同じで、感受性の柔らかな幼少時の体験だからこそ衝撃が根深く刻まれたのでは?
っていうか回りくどいたとえを持ち出さなくても、周囲が悶絶して倒れてくって十分怖いわトラウマだわ!
果歩が忘れ物をとりにもどった理由も不自然には感じなかった。替えのきくものなら諦めも付くが「アレ」はな……前段で夫のいい人ぶりや彼への愛情が綴られているから、行動動機に共感を覚えた。
「ぼぎわん」のような派手なアクションを期待すると肩透かしだが、家族の静かなる狂気や家庭の軋みに焦点を据えた、隣人が巻き込まれる系サイコホラーとしては読み応えがある(隣人じゃないけど)
難点を挙げるなら、解決策がそれかよ!!!!!
しかも連れて来てどうするとかじゃなくて、ただ居るだけでほぼ撃退できるのか……そうなると琴子があれこれ苦労したのや果歩や平岩家の面々がさんざん振り回されたのは何だったのか……
怪異の誤作動という発想自体は楽しかったのだが、解決策が安易すぎてビックリ。
あと本筋とは逸れるのだが、五十嵐が「ひきこもり」を自称する場面に違和感。
朝と夕方の二回犬の散歩にでかけて、降りてきて家族と食事をとって、日中に洗いものをする実家住まいの成人男性はただのニートなのでは……
序盤のお坊さんの「アンインストール」「物理破損」といったたとえが非常にわかりやすく面白かった。いいセンス。
ホラーなので予期していたが、エピローグは後味悪い。
プロローグの幽霊の正体は予想外だが、結局生きてる人間が一番怖いって帰結になるのだろうか。
五十嵐と琴子が割といい雰囲気だったので、今後恋愛に発展するかどうか気になるが無理かな……無理かもな……さておき銀ともども再登場があるなら、少しでも関係が進展してると嬉しい。


















