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角田光代の『紙の月』は、平凡な主婦が日常の退屈や孤独から銀行での横領に手を染めていく心理サスペンスです。主人公の葛藤や罪悪感、欲望との揺れが丁寧に描かれ、読者は彼女の心の闇に引き込まれます。日常の中に潜む虚無感や孤独、そして人間の弱さを浮き彫りにしつつ、倫理や自己責任について考えさせられる作品です。現実的で緊張感ある展開と心理描写が胸に残る、小説としての完成度の高い一冊です。
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【お金じゃ自由にはなれない】
「お金」という人間なら誰でも扱うであろうものを題材にしているので感情移入しやすいし、サスペンスとしても重厚感のある作りになっている。はじめはちょっとした出来心だったのが、いつしか歯止めがきかなくなって、ついには破滅へと暴走していく。角田光代先生はこのような切羽詰まった女性の心理描写が実に巧みである。結局、梨花が本当に欲していたのは、お金では買えない自由だった。でも、その自由を手に入れるためにはもちろんお金が必要で。お金って、良くも悪くも人間を変えるし、稼ぎ方以上に使い方にその人の人間性が表れると思う。