主人公の63歳のパート主婦、雅美がもし中学生に戻ったら…と想像するところから物語は始まります。ひょんなことから50年前にタイムスリップしてしまった彼女は、初恋の人である天ヶ瀬と再会。なんと彼もまた、令和の時代からやってきたと言います。
唯一の理解者として連絡を取り合う二人。雅美は「もう結婚はしない、自分のために生きる!」と心に誓います。しかし、男尊女卑が当たり前だった昭和の時代では、女性であるというだけで理不尽な扱いを受け、どんなに努力しても認めてもらえない現実に直面します。
その様子は読んでいて苦しくなるほどですが、ストーリーはテンポよく進み、ぐいぐい引き込まれます。そして何よりも、諦めずに自分の人生を切り拓こうとする雅美の姿に胸を打たれました。
過去に戻って自分の人生をやり直す物語は数多くありますが、本作は63歳という年齢で再び青春を生きるからこその、葛藤や希望がリアルに描かれています。
ラストには光が差し込み、希望が見える展開に救われました。年齢を重ねても、まだまだワクワクできる。そう背中を押してくれるような、心温まる一冊です。