幕末から戦後にかけての東京を舞台に、歴史に名を残すことはなくても、その時々を一生懸命に生きた人々を描いた連作短編集です。
地名には詳しくなくても、登場人物たちが同じ空気を吸い、同じ地面を踏みしめて暮らしている息遣いが伝わってきます。一つひとつの物語は静かに、じわ〜っと余韻を残して終わりますが、読み進めるうちに前の物語の主人公のその後がさりげなく明かされる構成がとても心憎く、面白いです。
特に印象的だったのは、忘れた頃に再登場した慶さんのエピソード。町人の暮らしに馴染みきれない葛藤を抱えながらも、なんだかんだ言って夫のことを認めていたのだな……と、その絆にじんわりと胸が熱くなりました。
また、「隠れる」の展開には驚きました!まるでコントのような滑稽さがあり、何か悪いことが起きるのではないかとハラハラしましたが、本人にとっては絶望的な状況も、客観的に見るとどこかおかしくて……。怖さと滑稽さが同居する不思議な読書体験でした。
時代が変わっても、人の悩みや喜びの本質は変わらない。東京という街の地層に眠る、無数の人生を愛おしく感じさせてくれる一冊です。










