ありがとう
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母の介護のために仕事を辞め、東京から地元へ戻ってきた主人公・都。中卒の貫一との将来や、ままならない仕事に悩み、必死でもがく彼女の姿に引き込まれ、一気に読み終えてしまいました。
「都は自分だ」――そう強く感じました。
わがままで自己中心的。欲しいものがあっても努力はせず、不遇な現状を誰かのせいにしてしまう。でも、それは都に限ったことではなく、きっと誰もが抱えている毒の部分なのだと思います。
「何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく。」
この一節が深く胸に刺さりました。幸せを追い求めることが、同時に自分を追い詰め、他者を許せなくしていくという皮肉。ぐるぐると回りながら悩み続けるすべての人に読んでほしい、痛切で、それでいて確かな一冊です。
















