『成瀬は天下を取りにいく』は、一見すると風変わりでマイペースな少女・成瀬あかりの行動を通して、「自分らしく生きること」の強さと難しさを描いた作品だと感じた。物語の舞台は滋賀県大津市。とても身近で現実的な場所でありながら、成瀬の言動によって日常が少しずつ特別なものに変わっていく。そのギャップがこの作品の大きな魅力だと思う。
成瀬は「天下を取る」と堂々と言い切るが、その目標は権力や名声ではなく、「自分が決めたことを最後までやり切る」という姿勢そのものにあるように感じた。M-1グランプリに出場すると決めたり、西武百貨店大津店の閉店を毎日見届けたりと、周囲から見れば意味が分からない行動も多い。しかし成瀬本人は一切ブレず、他人の評価や空気に左右されない。その姿は一見突飛だが、読んでいるうちにだんだんと清々しさを感じるようになる。
この作品が面白いのは、成瀬自身の内面を過剰に語らない点だと思う。物語は主に周囲の人物の視点で進み、彼らが成瀬に振り回され、戸惑い、時に救われていく様子が描かれる。そのため、読者も登場人物と同じように「成瀬って何者なんだろう」と考えながら読み進めることになる。そして気づけば、成瀬の存在が周囲の人の背中をそっと押していることに気づく。
特に印象的だったのは、成瀬が決して他人に「こう生きろ」と押しつけない点だ。彼女はただ自分のやりたいことを淡々と実行しているだけなのに、その姿が結果的に周囲の人の価値観を揺さぶる。努力や夢について声高に語るわけでもなく、感動的な言葉を投げかけるわけでもない。それでも、成瀬の姿は「他人と比べなくていい」「自分の物差しで生きていい」というメッセージを強く伝えてくる。
また、作品全体に流れるユーモアと温かさも魅力的だった。成瀬の言動はどこかズレていて笑ってしまう場面が多いが、その笑いは人を馬鹿にするものではなく、優しさを含んでいる。地方都市の日常や人間関係も丁寧に描かれており、派手な展開がなくても物語に引き込まれる。
読み終えた後、「天下を取る」とは何なのかを自然と考えさせられた。誰かに勝つことや有名になることではなく、「自分が納得できる人生を生きること」こそが成瀬にとっての天下なのだと思う。そしてそれは、特別な才能を持つ人だけでなく、誰にでも目指せるものなのかもしれないと感じた。
『成瀬は天下を取りにいく』は、将来に不安を感じている人や、周囲と比べて自分に自信が持てない人にこそ読んでほしい作品だ。成瀬の姿は決して「真似すべき理想像」ではないが、「こんな生き方もあっていい」と心を軽くしてくれる。静かだけれど力強く、読後に前向きな余韻が残る一冊だった。
本屋大賞を受賞したことをきっかけに
読んでみました。
主人公は滋賀県大津市に住む成瀬あかり。
いろいろなことに興味関心を持ち
成瀬は人生を通じて、達成したいことや
やりたいことがたくさんある女の子。
やりたいと言ったと思ったらすぐに行動する
フットワークの軽さに唖然としてしまいました。
読みながら最も印象に残ったことは、
成瀬あかり氏と私では
「うまくいかなかったこと」の捉え方が違うということです。
「花が咲かなかった(うまくいかなかったこと)」も「肥やし(成長)」に
なるのだと考えれば、失敗もマイナスなことではない。
わかる、わかるんだけど実践しようとすると難しいのが正直なところ。
まぁでも、時には好奇心と興味だけで突っ走ってみてもいいのかもしれないと思いました。
成瀬あかり氏の我が道をいく行動力と
成瀬あかり氏を支える周囲のあたたかな雰囲気が絶妙です。
何かに挑戦したいけど、失敗したくない、否定されたくないと思って
立ち止まっている方の背中を押す1冊になると思います。
本屋大賞受賞作!成瀬シリーズの一作目です。
読みやすい文章で、あっという間に読めます。どこにでもいそうで、どこにでもいない、そんな成瀬に貴方も虜になると思います。本を読み終わる頃には、成瀬と友達になりたいときっと思うはず!学生なら読書感想文などの課題にもいいと思います。
西武大津店の閉店から始まって、成瀬あかりを中心に短編で繋がってストーリーが進んでいく。
成瀬という特異なキャラクター設定に驚かされるものの、そんな成瀬を受け入れる幼なじみの島崎ゆかりの視線を通じて、読者も成瀬の超人ぶりを受け入れられているような気がする。
成瀬が登場しない短編に登場するマサルと敬太も、タイプは違うのに幼なじみの関係がずっと続いていて、成瀬と島崎の関係性に通じるものがあって、成瀬たちの関係も敬太たちのように長く続くことを連想させて、微笑ましい感じがする。
別々の短編で登場した二組の幼なじみは西武の閉店と地元のつながりで、後段の短編で一緒に登場する。連作短編の構成が、長編以上のつながりを持って描かれているのは見事。
自分の意思を曲げない成瀬。周りから変人扱いされるも自分の目標をしっかりと決め、それに向かってひたすらに突き進む。今の現代人には憧れる生き方だと思います。そして、それを取り巻く人たちとの関わりで、成瀬も人の子であることもわかります。
本屋大賞受賞の本って、知ってるけど読んだことないとか、読んだけどちょっと好みじゃないとかのこともあるんだけど、これは面白かったな
成瀬さんがとにかくかっこいいから、そばでずっと見ていたい感じがする。
こんなふうに生きている友達がいたら楽しいだろうな。ベタベタしすぎない友情というのもいい。
【2024年本屋大賞 大賞受賞作】
主人公【成瀬あかり】の中学2年生から高校3年生までの物語。
話題に上がっていたので読んでみました。
奇想天外な発想の持ち主で、だけど芯がある成瀬というキャラクターの魅力と
その成瀬を絶対に大物になると成瀬が大好きな相方や、そんな我が道を行く成瀬に魅了された人達と、何をしても止まることのない社会の流れ。
世界を救う系なのかな?と読み始めた自分に、某弱無人に振る舞う成瀬と、それでも日常は進んでいく社会との掛け合いのギャップが逆に読みやすくて良かった。
それこそ成瀬は何かをしてくれるんじゃないか?という成瀬の周りの人と同じ視点に立てる本であるからこそ、本屋大賞大賞受賞作なのだと思います。
詠んだらワクワクして続きが気になる作品











