『スキャンダルの狭間で カント形而上学への挑戦 ―『純粋理性批判』とルソーの影響』は、ジェレマイア・オルバーグ氏による、カント哲学の形成過程をルソー思想との関係から読み解く学術的研究書である。著者は、カントの「理性批判」が単なる認識論的試みではなく、ルソー的な人間観・道徳観への応答として構築されたことを示し、カント哲学の倫理的・人間的側面を浮き彫りにしている。形而上学的探究と人間存在への問いがどのように交差したのかを明快に分析しており、カント思想の背景を深く理解したい読者にとって示唆に富む一冊である。
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発売日: 2024年03月28日
発行元: 知泉書館
カントはルソーから強い影響を受けながら『純粋理性批判』を完成させた。しかし彼は「誰かの書いたものを読み,何かを学び取ったなら,私はその人を引用しない」との趣旨で,それを語ることはなかった。
カントに対するルソーの影響については,20世紀の前半以来カッシーラーを始めいく人かの研究者により検討された。しかし通常はルソーの『社会契約論』が実践理性に与えた影響が一般的に語られてきた。しかしルソーの影響について注目されていない事柄としては,自然と理性,個人間の対抗関係,嫉妬,欲望,自由,歴史的諸問題との遭遇の決定的重要性,そしてこれらに不可避的に含まれる暴力など広範にわたっている。
本書では『純粋理性批判』を中心に,形而上学の基本問題である,人間理性のもつ自然本性としての形而上学的指向性と,同時にそれに反する演繹的論証の限界という,理性にとって相反する対抗性を通して形而上学へ挑戦するカントの論理を考察する。
人間理性が可能的経験の領野を踏み越えるという自然本性は,そのために避けがたい仮象を引き起こしてしまう。この人間理性の宿命である対抗性の問題を「近代理性のスキャンダル(つまづき)」として捉えるなら,それは理論的認識を超えて道徳性や宗教性にも関わることになる。著者はカント哲学の前批判期から『純粋理性批判』の成立,さらにはその論理構成の全体像にまで踏み込んで,人間理性の限界と対抗性について自身による思想を率直に表明する。他に類書のない意欲作である。
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