北アイルランド紛争について学べる本4選

北アイルランド紛争について学びたい方に、4つのおすすめ本をご紹介します。1つ目は、現地の人々の生の声を集めた非フィクション。2つ目は、歴史に裏打ちされた真実を辿るノンフィクション。3つ目は、小説の形でそこで生きる人々の悲しみや希望を描いた一冊。最後に、漫画によるビジュアルで分かり易く解説された一冊を取り上げてみました。いずれも紛争の深い理解につながります。まずはどれか一冊手に取ってみてください。
『北アイルランドのプロテスタント』

神とアルスターのために――。
北アイルランド紛争を知る上で、外部からは理解しがたいユニオニストのメンタリティーに光をあて、単純に図式化されがちな紛争の背景に最新の調査をまじえて迫る論考。
宗教の違いは「本当の紛争」に影響することはあっても、宗教それ自体が紛争をもたらす原因ではなく、……紛争は二つのコミュニティの大多数の住民の記憶、伝統、アイデンティティ、忠誠心などをめぐる紛争であり……北アイルランド紛争解決の困難さは、双方の社会経済的な相違のなかに、それぞれの歴史的記憶、ナショナル・アイデンティティ、そして宗教も融合しており、それが敵対的な集団的忠誠心を創出しているからである。(本文より)
作者 | 松井清/著 |
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価格 | 3800円 + 税 |
発売元 | 彩流社 |
発売日 | 2008年12月24日 |
『紛争の記憶と生きる 北アイルランドの壁画とコミュニティの変容』

「話してもわかりあえない」者同士が同じ場所で暮らすとき、コミュニティをどう作り上げるのかーー北アイルランド紛争後のベルファストをフィールドワークして、住民が描く壁画がコミュニティの記憶とつながりを支える機能を果たしていることを照らし出す。
はじめに
第1章 北アイルランド紛争後社会と壁画ーー本書の目的と意義
1 他者との〈共生〉と北アイルランド紛争後社会
2 なぜ壁画なのか
3 集合的記憶への接近
4 外部者である調査者(私)の調査地への接近
第2章 北アイルランドという場ーーフィールドの政治・社会背景
1 北アイルランドに関する前提ーー用語の問題について
2 北アイルランド紛争・和平へのプロセス
3 ベルファストの空間的概況
第3章 北アイルランドの壁画の歴史と壁画研究ーー先行研究から明らかにされたこと
1 壁画の歴史
2 壁画研究の歴史
3 本書の方法
第4章 壁画の表象における顕在と不在ーー何を記憶し、訴えるのか
1 ベルファストの壁画数と題材
2 カテゴリーとその特徴
第5章 壁画のイメージの流通ーーイメージは、コミュニティでどのように受け継がれ、共有されていくのか
1 壁画の題材はどう表現されるのか
2 イメージの流通と共有
3 イメージの素材(引用元)/ 題材と場所
第6章 観光と社会統合とローカル・コミュニティ
1 北アイルランド・ベルファスト市の観光(限られた空間での、痕跡の強調という方針)
2 都市空間のイメージーー都市の無徴化を目指す政策
3 ローカル・コミュニティの実践ーー壁画には、どのような変化があったのか/なかったのか
第7章 二つのコミュニティーー和解プロジェクトに見る可能性と限界
1 和解の壁画ーー『ゲルニカ』プロジェクト
2 「文化」と政治ーー対立の記憶の表象と題材の困難
第8章 壁画と紛争経験の表象
1 絵という形態が作り出す共同性
2 文化による対話と対立
3 「別の対話モデル」--言い合う、ということがもたらすもの
おわりに
作者 | 福井 令恵 |
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価格 | 4400円 + 税 |
発売元 | 青弓社 |
発売日 | 2015年03月31日 |
『紛争という日常 北アイルランドにおける記憶と語りの民族誌』

民族紛争と政治暴力。その歴史において暴力と結びついた土地、北アイルランド。長期紛争のなかでの日常経験や人間関係に着目し、綿密な聞き取りから人びとの紛争の記憶と物語に迫る。
作者 | 酒井朋子 |
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価格 | 6600円 + 税 |
発売元 | 人文書院 |
発売日 | 2015年03月12日 |
『鋼鉄のシャッター 北アイルランド紛争とエンカウンター・グループ』

ロジャーズの先駆的エンカウンター・グループの記録。北アイルランド紛争は、英国が12世紀にアイルランド島を支配して以来続いていた。貧しいカトリックと裕福なプロテスタント。何世紀にも渡った憎しみ合い。紛争は泥沼化していた。1972年、ロジャーズらは、北アイルランドの首都ベルファーストから来たプロテスタント4名、カトリック4名、英国陸軍退役大佐1名と、3日間24時間のエンカウンター・グループをもった。本書はその記録であり、社会的・国際的紛争解決への示唆を与えてくれるであろう。
作者 | C.パトリック・ライス/畠瀬稔 |
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価格 | 1760円 + 税 |
発売元 | コスモス・ライブラリー |
発売日 | 2003年12月 |
北アイルランド紛争の詳細についてご紹介する作品4冊、いかがでしたでしょうか。誰しもが、歴史や社会について学ぶとき、難解で難しく感じてしまうことが多いかもしれません。しかし、物語性のある小説や漫画という形で、歴史の一部を紐解くというのも一つの学びの手段ではないでしょうか。
現実の主役となった人々の思想や背景、良と悪、愛と憎しみ、悲劇と喜び、人間のありのままの本質が描かれた作品通し、まるで彼ら自身の目を通したかのような体験と共に、私たち自身もそこから多くのことを学び取ることができます。
紛争という深遠なテーマについて考える時、必ずしも社会学や歴史学の専門書籍が全てであるわけではありません。肌で感じ、心で理解し、自分なりの答えを見つける。それもまた、自己理解を深め、社会に対する理解を深める一助となるでしょう。
今回ご紹介した4冊は、北アイルランド紛争について具体的な知識を得るための良い入門書となるでしょう。この問題が生まれる背景や、その影響、そしてそれがどのように終息へと向かったのか、詳しくは各作品をお読みいただくことをおすすめします。
そして、紛争がどのように始まり、どのように終わったのかを超えて、何が人間に生じるのか、何が社会に影響を及ぼすのか、ということについて考えるきっかけとなれば幸いです。情報を学ぶだけではなく、それを通じて自身の中に何かを感じ、何かを思う。そんなきっかけを提供できればと思います。
最後に、どんな本でも、読者自身の心に響くようなものであってほしいと願います。それが過去の事実であろうとフィクションであろうと、自分に何を感じさせ、何を考えさせてくれるか、その価値は非常に大きいです。それぞれの作品を通して、きっと素晴らしい発見があることでしょう。
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