心温まる青春の中に切なさや恋模様も味わえる作品でした。
物語に入り込みやすいテンポある会話の掛け合いが多く、気づいたら作品にのめり込んでいました。
クラスではあまり目立たない主人公とクラスの中心的な存在の彼女。
普通なら交わることのない二人ですが、淡々とした主人公がつい罪を犯してしまうことで2人の物語が交錯します。
犯行現場を目撃した彼女が黙っているという交換条件に出したのは、彼女の専属カメラマンになることでした。
自分では冤罪と思っていましたが、罪がばれるとややこしくなると思った主人公は、その提案を引き受けることにします。
でも、冷静な主人公とは対照的に自分の考えをすぐ顔に出してしまうだけでなく、行動にも出してしまう彼女。
そんな彼女に翻弄されることで、なんの変哲もないけど穏やかな日々は終わりをつげ、ちょっぴり騒がしく、でも華やかに彩られた2人の時間が始まります。
しかしあることがきっかけで、天真爛漫な彼女が病に侵されていることを主人公は知ってしまいます。
そして、その秘密を知った時、主人公は見せかけの笑顔の奥に隠されるありのままの彼女を撮りたいと心に誓うのです。
彼女の生きてる証を残すかのように写真を撮り続ける主人公。
刻々と迫るタイムリミットに、涙なしには読めませんでした。
そばにいてくれる人を大事にしよう、一瞬一瞬を大切にしようと思わせてくれる作品でした。
また、彼女の写真を撮るというテーマですので、写真についての描写が随所随所にちりばめれています。
大体の人は、この主人公のように万人受けする写真構図のとれた写真を評価しがちです。
わたしもそうでしたが、どんな一瞬をも収め、瞬間を永遠にできる写真の魅力に少しだけ気づけたような気がします。
この作品のように、人の真相を捉えた目の奪われる写真を撮ってみたくなりました。
読んでいて心が透き通り、浄化されていくようなおすすめの一冊です。