『文明の衝突という欺瞞 暴力の連鎖を断ち切る永久平和論への回路』(マルク・クレポン/白石嘉治)は、サミュエル・ハンティントンの「文明の衝突論」に対する批判的検討を通じて、暴力や対立の連鎖を断ち切るための理論的アプローチを探る一冊である。永久平和論や国際倫理の視点から、文明間対立の神話を解体し、平和構築や国際協力の可能性を考察する。現代の国際関係や平和学を深く理解するための示唆に富んだ作品である。
ハンチントン流文化本質主義の陥穽を剔出!
蔓延する〈恐怖と敵意の政治学〉に抗う理論
果たして「文明」とは「衝突」するものなのか。この問いを、私たちは真摯に考えてきただろうか。
「9.11」以降、アメリカの政治学者S.ハンチントンの「文明の衝突」論(同名の書物の発表は1996年)が、再び脚光を浴びている。この理論がアメリカの対イラク武力攻撃の正当化に援用されているように、テロの恐怖に脅えた世界は、このわかりやすい、安易な論理に飛びついた。
「文明の衝突」論は、文化本質主義(文化を自足した純粋なものと捉える立場)に立ち、「文明同士は互いに相容れず、必ず“衝突”する運命にある」と説く。この理論に従うなら、戦争が不可避のものとなってしまう。著者は、この破局的シナリオを、何らの信条とも切り離し、理論として徹底的に検討・批判する。状況への直截な介入の書であり、同時に、曖昧なままに使われている「文化」「文明」概念の再検討を含め、鋭い文明論ともなっている。
本論および3人の著者による付論(著者が日本語版のために特別寄稿した「文化と翻訳」、桑田禮彰「法・歴史・政治」、出口雅敏「文化の力の追求」)は、私たちがより困難が予想される今後の状況と対峙しつつ、ハンチントン流の詐術に抗い、真の平和へと向かう論理を構築するために、確かな視座を提供してくれるだろう。
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