人見知りで、付き合いよりも庭を見ているのが好きな高校生ひろは、母の望む子供は演じられません。
競争ばかりの東京で自分なりに頑張りはしたのですが、ついに限界がきて感情を爆発させてしまいます。
あの子には水神様の加護がある。
ありのままのひろを理解してくれる祖母の元に引っ越すことになりました。京都伏見の小さな神社の隣の家です。
8年ぶりの伏見でひろは懐かしい人たちと再会します。
ひとりは近所の造り酒屋の跡継ぎ息子で、大学生になっていました。
もうひとりは銀の髪の青年。
青年の金色の目にみつめられ、ひろは懐かしさと安心感を覚えました。
けれど同時に疑問が浮かびます。
この優しい金の眼の持ち主は、たしか人間じゃなかったはず。
ひろはこの二人とともに、京都の奇妙な出来事を謎解きしていきます。
ひろが寺社や商家を訪れるたびに、読んでいるほうも京都巡りをしている気になれます。
宇治川派流の橋を渡り、錦市場を歩く。米麹の香りをかぐ。池をのぞく。
京都の歴史もはいってきます。太閤さんの桃や今はもうない観月の名所。
京都出身の作者の書いた、観光地にとらわれない、京都現地の小説です。
嵐の夜の伏見大社で、闇の千本鳥居をくぐる体験までさせてもらえます。