悪人ばかりが集い、旅情感たっぷりに連続殺人を描いたサスペンス小説です。
恒文社の週刊誌『F6セブン』1966年8月6日号~1967年4月22日号まで連載後に、同年単行本化されました。細かく話が動いていく感じや、濡れ場の多さにその片鱗を感じます。
犯罪で手に入れたダイヤを引き取りに行くという筋立てなので、最初から善人が集うとは思えない旅ですが、それにしても悪人が勢揃いのため、リーダー格である宝樹が善人に見えてくるという錯覚も受けてしまいました。
登場人物の誰もが碌なことにならないことは目に見えてますが、気持ちの良いくらいに酷い目にあっていきます。
誰もが自らの欲望を抑えきれず、その究極が人間が持てるだけの欲望を詰め込んだ異形な怪物のような造形の黒幕だったと思います。
最後には意外な真相が明かされますが、あまりそこに注力していないのか、読者にもメタ的に予想できてしまうものになっていました。
また、どうしても話の展開にやや強引なところがあったり、大和田が一般人にしても女にだらしなくないかと思ってしまい、手放しで面白いという作品ではありませんでした。
しかし、読んでいる間のリーダビリティーは高く、実際に連載で読んでいたとしたら、なんだかんだと楽しんで最後まで読んでいたのではないかと思うだけの力がありました。
大和田がやたら“男”って感じの描写だったりと、現代から見たら価値観や描写に時代を感じてしまう所も多いですが、何も考えずに悪党達が右往左往する様を楽しみたい時には、今読んでも楽しめ、欲望に忠実に生きすぎるのも気を付けないといけないなと読み終われると思います。