ラブストーリーのオススメに出ていたので、気になって読んでみることにしました。
早速ページをめくるとそこには思い描いてたよりもすこし暗めの、
でも、三秋縋さんのマジックでほどよく澄み渡った、表紙のように爽やかな青春が広がっています。
物語は、主人公が中学を卒業する場面から。
”痣”があることで悩み、葛藤する主人公の姿を、彼の思い込みも織り交ぜながら色濃く丁寧に描いていました。
物語の世界に浸りながら読み進めていくと、主人公の考え抜かれた想いにたどり着くことができます。
それは、痣があるからこそ生まれた考え。
彼をより知性的で魅力的な人間に映しているような感じがすると同時に、
悩んでいる当事者は「欠点は欠点でしかない」という考えに陥りがちですが、欠点があるからこそ考えを巡らせ、その正解(こたえ)を大切にすることができると思いました。
また、瑞々しい心を持った初鹿野も主人公の記憶で登場し、彼のなかで初恋が蘇ってきます。
主人公とは対照的に非の打ち所のない彼女ですが、二人の共通点によって関係は深まり、
その様子は甘酸っぱく初々しくて、秘密のやり取りを見ているようでした。
そして、やんちゃだけどどこか冷めている主人公の隣に純粋な初鹿野がいることで互いの存在が引き立ちます。
悩み苦しんだ人だけが身にまとうことができる輝きはきっとあると思わせてくれる作品…
三秋縋さんが描く、極上の比喩表現がつまった物語の世界を、ぜひたっぷりとお楽しみください。