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『ノースライト』は、建築士・青瀬稔が主人公のミステリーだけど、事件の謎を追うというよりも、人の心の奥にある“喪失”や“再生”を描いた物語だと感じた。青瀬は、依頼主から「あなた自身が住みたいと思う家を建ててください」と言われて、理想の家を設計する。でも、その家には誰も住まず、ただ一脚の椅子だけが置かれていた。そこから始まる謎を追ううちに、青瀬自身の過去や家族との関係も少しずつ明らかになっていく。読んでいて印象に残ったのは、「ノースライト」という言葉の意味。北向きの窓から入る柔らかな光のことらしいけど、それが希望や静かな再生の象徴のように感じられた。青瀬が過去の失敗や喪失と向き合いながら、少しずつ前に進んでいく姿は、僕たちが日常で感じる不安や迷いにも通じると思った。
この本は、派手な展開はないけれど、静かに心を打つ力がある。人はなぜ家を建てるのか、なぜそこに住むのか――そんな当たり前のことを、改めて考えさせられた。僕も、自分がどんな場所で、どんな人たちと生きていきたいのか、少しずつでも考えていきたいと思った。













