オーケストラサークルを舞台に「恋」「友情」の2編で別の視点から描かれるストーリー。
指揮者に招かれた星近(ほしちか)と付き合うことになった蘭花(らんか)は、彼のゲスな面が明るみに出たことでドロドロしたものになっても、彼から去ることができない。彼女の盲目的な「恋」。
サークル仲間の瑠利絵(るりえ)は彼女の親友のポジションを得られないことに葛藤しながら蘭花を支える。その盲目的な「友情」。
蘭花の結婚式から遡って語られ、そういうことか、と繋がって読み終えることになる。
恋や友情は確かに大切だけど、のめり込む二人がどうなるのか、冒頭の結婚式にどうつながるのか、気になって一気に読める。
【いつまでも、その頃の甘い思いに浸っていたい、ここに縋り付いていれば大丈夫、と人の心を蝕む甘美な思い出】
恋愛に溺れ、泥沼にハマっていく様を当事者である蘭花とその“親友”である留利絵、双方の視点から描かれた秀作。選ばれる側である自尊心が高い蘭花と選ばれない側である卑屈な留利絵。一見異なる2人に見えるが、傲慢で独善的である点においては似た者同士に見える。“親友”アピールにおける一種の気持ち悪さがありがちな設定で巧みに言語化されているので、特に女性は共感する人もいるのでは。女性同士の微妙な空気感の表現が秀逸。